最近読んでいる本の中で「サンクコスト(埋没費用)」という言葉が出てきます。
経済学でいうサンクコストとは、すでに支払ってしまって回収できない費用のことをいいます。
本の中で面白い例が出てきます(『あなたを変える行動経済学』(大竹文雄著))。
質問1 ある映画のDVDをレンタルして一人で見ることにしました。評判の映画でしたが、見ていてすぐにつまらない映画だと分かりました。あなたは映画の途中でDVDを見るのをやめて、他のことをしますか? A 最後まで見る B 他のことをする 質問2 懸賞に当選して映画のDVDレンタル券が景品として送られてきました。あなたは一人でその映画をみることにしました。評判の映画でしたが、見ていてすぐにつまらない映画だと分かりました。あなたは映画の途中でDVDを見るのをやめて、他のことをしますか? A 最後まで見る B 他のことをする
1番目の質問では「A 最後まで見る」と答える人が多く、2番目の質問では「B 他のことをする」が多いようです。
自分でお金を払って借りると「元を取らなきゃ!」と思うから、最後まで見てしまう。
無料で見られる場合は、途中でやめられる。
とてもわかります。
私もこの典型的なパターンを選ぶ人です。
でも、これは経済学的には合理的ではないといいます。
レンタル料を400円、映画の時間を2時間とした場合、こう考えることもできます。
質問1の場合: A レンタル料400円+退屈な2時間 B レンタル料400円+有意義な時間
すでに支払っている400円は返ってこないため、これからどうするかを考えるときには、「退屈な2時間」を選ぶか「有意義な時間」を選ぶかの選択肢になります。
将来を考えて選択する場合、戻ってこない過去の費用(サンクコスト)を選択の理由に入れる必要はありません。
であるならば、「有意義な時間」を選択する方がいいのではないか。
面白いですね。
こういうことは日常的に起こります。
購入したワインを開けたけどそこまで美味しくない。でも、もったいないので飲み切る。
ホテルの朝のバイキングで、お腹いっぱいでも一通り置いてあるものを食べる。
ビジネスでは少し深刻です。
投資したけど事業がうまくいっていない。投資したのだからと辞める判断ができない。
ある勉強会でサンクコストに関して話し合う機会がありました。
出席者がこんなことを仰っていました。
「トルストイの『戦争と平和』(全6巻)のうち最初の2巻を購入したが読まない状態になっている。もう読まないだろうと思っているのに、この2巻を古本屋に売るのをためらってしまう。」
昨年の6月くらいから私も『戦争と平和』を読んでいますが、なかなか進まない(やっと4巻目です)。
テーブルに置かれた『戦争と平和』を見るたびに、この「サンクコスト」のことを思い出します(笑)
何かの選択で迷ったら、一度「サンクコスト」ということを考えてみるのもいいかもしれません。
合理的な判断がつねに正しいとは思わないのですが、立ち止まってみるということがポイントなんだろうと思います。
個人的には、つまらない映画でも最後まで見ることで何かしら400円の価値は得られると思っているので、質問1には迷わず「A 最後まで見る」を選びますが・・・