『歴史の大局を見渡す』(ウィル・デュラント、アリエル・デュラント著/パンローリング)
ピューリッツァー賞を受賞した思想家2名によるエッセイ集です。
著者は『The Story of Civilization(文明の話)』という数千ページにもおよぶ歴史書を書き、ピューリッツァー賞を受賞しました。
本書ではエッセイという形で、我々が歴史から何を学べるかが書かれています。
地理、生物学、人種、人の性質、モラル、宗教、経済、社会主義、政治、戦争、発展と衰退などのテーマで語られます。
「政治と歴史」というテーマではこのような文章があります。
「人種間、階級間の闘争が起きると、私たちは敵対する二つの陣営に分断されてしまう。(中略)経済が生みだした富をうまく配分できなければ、言葉巧みに国民に安心を約束する人物に独裁への道が開かれるだろう。」(p.122)
今年は世界中で多くの国政選挙が行われる一年となります。
この文章で米国を思い浮かべました。
今の時期には噛み締めたい文章ではないでしょうか。
「進歩」という観点から著者はこう書いています。
「私たちが問題をかかえつつも本当に進歩しているなら、それは私たちが昔の赤ん坊より健康で賢明に生まれてきたからではなく、豊かな遺産を受け継いだからである。」(p.160)
教育とは、その遺産(知的、道徳的、技術的、美的遺産)をできるだけ多くの人へ引き継いでいくことである。
そして、歴史とは「遺産の創造とその記録」だといいます。
過去の積み重ねの上に今の我々が存在する。
そう思うと、「遺産」に対して深い畏敬の念を抱きますし、それを作ってきた先人たちへ感謝の気持ちが湧いてきます。
歴史の理解度によっても本書から感じることが違ってくるのだろうなと思いました。
歴史を深く見てきた著者たちだから書けるエッセイであり、それだけ深いものがあるのだと思います。
もう少し歴史への理解を深めたあとに、再度読み返してみたい本です。