『イタリア紀行 (上) (下)』(ゲーテ著/鈴木芳子訳/光文社古典新訳文庫/2021年)


ゲーテが30代後半に約2年間イタリアを巡った記録です。
ゲーテがどういう物の見方をしていたのか、何に影響を受けたのか、何を学びとったのかに関心があると、本書を楽しく読めます。
祖国ドイツにいる友人たちへ送った手紙がもとになっています。
ゲーテに興味がないと退屈だろうなと思える本でもあります。
ゲーテは心底芸術への関心が高いのだなと感じます。
イタリアという土地で絵画、彫刻、音楽、建築、自然の景色に満たされ、最高に刺激的な機会だったんだということが伝わってきました。
芸術専攻で留学したような感じです。
ゲーテ自身もデッサンをしており、プロの画家に教えてもらっているという記述も出てきます。
そして自然の素晴らしさに感嘆している。
「やはり自然という比類なき書物には、どの頁にも大いなる内容が盛り込まれている。」(上巻 p. 389)
自然が原点であるということを肌で感じる場所だったのでしょう。
建築への関心が高かったことも印象に残りました。
「建築術は古の亡霊のように墓穴から抜け出し、私に次のように命じる。『死語とされている言語、古語の規則を学ぶように、建築学を学びなさい。実際に行うためとか、その教えに胸躍らせるためとかではなく、ひとえに過ぎ去った時代の古人の尊い生を心静かに敬うために学ぶのです』と。」(上巻 p. 183)
私もこれに影響を受けました −− 西洋建築に関する本を読んで学んでいます。
本書には多くの芸術作品や芸術家の名前が出てきます。
ゲーテは博識だなと圧倒されます。
でも、ちょっと面白いと思った点は、訳者の注釈を読んでいると、ゲーテが作品や作者を誤って認識している部分が結構あるところです。
ゲーテも人なんだと安心しました。
ゲーテと一緒にイタリアを旅することができました。
こんな旅ができたら最高だろうな。
ただひたすら芸術とその土地に触れて過ごす。
それによって人生後半期の作品(仕事)に大きな影響を及ぼす。
次は、他者から見たゲーテ像を追ってみたいと思います。
私のゲーテをめぐる旅も後半に入りました。
