『対話型組織開発 その理論的系譜と実践』(ジャルヴァース・R・ブッシュ、ロバート・J・マーシャク編著/英治出版)

「対話型組織開発」の理論書です。
21名の専門家が、対話型組織開発に関する考え方をあらゆる面から書いています。
本書では組織開発を「対話型」と「診断型」とに分けています。
従来からのアプローチが「診断型」であるのに対し、2009年に論文で発表されたアプローチをもとにしているものを「対話型」としています。
重なり合う部分もありますが、根本的な違いはマインドセットにあります。
「対話型」の考え方は「社会構成主義」から大きな影響を受けています。
社会構成主義とは、「人々の間で語られることや、人と人の関係性によって現実(リアリティ)が構成されるとする考え方」(p. 12)です。
「対話型」の前提となるマインドセットは以下の8つです。
- 現実と関係性は社会的に構成される
- 組織は意味を形成するシステムである
- 広い意味における言葉が重要である
- 変革を起こすには会話を変えなければならない
- 統一性を求める前に、違いを明らかにするための参加型の探求と積極的な関与の仕組みを構築する
- グループと組織は絶え間なく自己組織化する
- 転換的な変革は、計画的というよりも、より創発的である
- コンサルタントはプロセスの一部になる。プロセスから離れてはならない
そして、対話型組織開発による組織変革には3つの重要なプロセスがあります。
- 現在における現実の社会的構成に創造的破壊が生じ、より複雑な再組織化がおこなわれる
- 1つまたは複数の核となるナラティブに変化が生じる
- 生成的イメージが導入されるか、または自然に現れ、思考と行動のための新しい説得力のある代替策を提供する
これらの考え方を詳しく本にまとめています。
本書を通して一番得たことは、「社会構成主義」という考え方に出会えたことです。
どのような考え方かを詳しく知りたいと思い、社会構成主義の第一人者であるケネス・J・ガーゲンの『関係からはじまる 社会構成主義がひらく人間観』を読んでいます。
哲学的な考え方であり、私の中で大きな視点の変換が起きています。
まだ消化しきれていませんが、この考え方がどう自分自身の仕事に影響を与えるか、今から楽しみになっています。
このように考えていくと、「対話型組織開発」というのは組織開変革のアプローチというだけでなく、思想・哲学であるということがわかります。
そして、奥が深い。
復習のために、先日読んだ『実践 対話型組織開発 生成的変革のプロセス』(ジャーヴィス・ブッシュ著)を読み返しています。
実践形式になっていて読みやすく、理論書を読んだ後ですので、理解度が格段に変わりました。
本書は理論書であり、全てを理解するにはまだまだ時間がかかりそうです。
常に手元に置いて、辞書のように立ち返っていきたいと思います。