従業員の幸福度について考える|ウェルビーイング|中小企業の社長向け

こんにちは、3Cサポートの平山です。

最近仕事上で「ウェルビーイング」について考える機会が多く、以前このような記事も書きました。

▼参考
事業承継・M&Aを進めていく中で「ウェルビーイング」という視点も取り入れる|中小企業の社長向け

今回は、ウェルビーイングの中でも、「従業員の幸福度」に絞って考えてみたいと思います。

目次

従業員の幸福度とは

ウェルビーイング

まずは、「ウェルビーイング」という考え方から見ていきます。

ウェルビーイング(well-being)」とは、心と身体と社会のよい状態のことを指します。「幸福」と訳されることが多いようです。

世界保健機関(WHO)憲章の中ではこのように謳われています。

「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。」

Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.
公益財団法人日本WHO協会

従業員幸福度(Employee Happiness)

従業員のウェルビーイングをどう把握するか。

「従業員幸福度(Employee Happiness)」という考え方があります。これは、従業員の働くことに対するやりがいや喜びなどを数値化したものです。この指標を取り入れる企業も増えています。

従業員幸福度の測り方として、インタビューやアンケート調査、行動パターンの分析、適性検査などがあります。

従業員幸福度と従業員満足度との違い

従業員幸福度と似ている考え方で「従業員満足度(Employee Satisfaction)」というのがあります。

従業員満足度とは、給与、労働時間、福利厚生、職場環境などへの満足度を数値化したものです。

従業員満足度が労働環境がどの程度充実しているかを見るのに対し、従業員幸福度は従業員の幸福の度合いを見ていきます。

従業員の幸福度を上げていくためには、労働環境を整備するだけでは不十分であり、ときには従業員のプライベートも含めて考えていく必要があります。

なぜ従業員の幸福度が注目されているのか

従業員が幸せかどうかを把握しようとする企業が増えています。

ある研究によると、自分が幸せだと感じている従業員ほど、創造性や生産性が高く、欠勤率や離職率も低くなるそうです。(参考:「ウェルビーイング」前野隆司・前野マドカ著/日経文庫)

確かに、幸せな状態だと仕事に対する取り組みも変わってきます。私生活で心を悩ます問題があると、どうしても仕事に集中しきれないということがあります。良いアイディアも浮かびづらいですよね。

生産性や人材確保が大きな課題になっている中小企業にとっては、従業員に幸福な状態で働いてもらえるかどうかは考えていきたい部分になります。

従業員の幸福度と職場・プライベート

会社として従業員の幸福度は上げられるのでしょうか。

働き方改革は幸せ?

この数年、働き方改革として多くの企業が労働環境改善へ取り組みを行ってきました。これに関連する国からの助成金も多く交付されています。

働き方改革は従業員を幸せにするものでしょうか?

働き方改革とは、労働環境を見直すことで、働く意欲のある人が働ける社会をつくり、国の生産性を上げていこうという考え方です。「幸福」というところを軸にしているわけではないため、必ずしも働き方改革で従業員が幸せになるとは限りません。

よく聞く話ですが、長時間労働の抑制により残業代が大きく減り、家計が厳しくなったと嘆く従業員も多いと。この人たちにとっては、働き方改革で幸福度が下がる結果になってしまったとも言えます。

働き方改革に対する違和感を感じる社長も多いと思います。本当に従業員のためになるのかどうか。

従業員のプライベートへどの程度踏み込んでいいのか

従業員の幸福度を考える上では、従業員のプライベートのことまで考えていく必要があります。

職場環境がどれだけ良くても、私生活で問題を抱えていたら仕事にも影響が出ます。

でも、社長としては、どの程度従業員のプライベートに踏み込んで良いのか躊躇すると思います。従業員の世代によっても対応が難しいですよね。

幸福度を上げるために

従業員の幸福度を上げるためにできることがいくつか考えられます。

  • コミュニケーション
  • 情報共有
  • 権限委譲 など

従業員は自分が会社の役に立っていると感じたいものです。これらをうまく組み合わせていけると、従業員が会社内で必要とされていると感じやすくなります。仕事への意欲も高まり、幸福度も高まることが期待できると言われています。

従業員の幸福度と社長の価値観

多くの社長は、従業員に対して「幸せになってもらいたい」という気持ちを常に持っていると思います。

会社の規模が小さくなればなるほど、従業員1人1人とのコミュニケーションも増えますし、家族的な関係性にもなってきます。従業員が朝出社してきた雰囲気でどういう精神状態かもなんとなくわかるものです。

社長の考える「幸福」とは

社長が考える「幸福」とは何でしょうか?

もし社長が「人間的成長」を幸福の要素と捉えている場合、従業員を敢えて「人間的成長」のために厳しい環境に置くこともあるかもしれません。長期的には従業員にとっての幸福につながると思うからです。

でも、従業員にとっては幸福と感じられないケースも多く、それが原因で会社を辞めるということも実際にはあります。

親の心子知らず 状態です。

もし社長が「自主性」を幸福の要素と捉えている場合、従業員の自主性を尊重した環境を作り、自分で考え自分で行動することを望むかもしれません。

でも、従業員によってはそれが辛い人もいます。指示されて動く方がラクだからです。実際に、自主性を求められることに苦痛を感じて退職した人を何人も見ています。

このように、社長の考える「幸福」が従業員の幸福度を上げないケースもあります。

まずは、社長自身が何を「幸福」の基準にしているかを把握することをおすすめします。それがわかると、従業員に対して過度にその基準を当てはめることも避けられるようになります。

従業員の幸福を決めるのは誰か

会社にとって従業員の幸福度が大事なことはわかりました。幸福度を上げるための取り組みもしていきたい。

しかし、ここで疑問が出ます。

従業員の幸福を決めるのは誰か?

会社でしょうか?
社長でしょうか?
同僚でしょうか?

結局、従業員の幸福を決めるのは、従業員自身でしかありません。

どれだけ環境が良くても、周りから必要とされていたとしても、本人が「幸せ」と感じない限り幸せではなくなります。たとえ劣悪な環境だとしても、本人が「幸せ」だと思っていれば幸福度は高いはずです。

そこで、まずは従業員がどう幸せを感じているのかを可視化するところから始めるといいと思います。

従業員の幸福度を可視化するツール(参考)

従業員の幸福度を可視化できるツールをご紹介します。

幸福度診断 Well-Being Circle」というツールがあり、個人は無料で幸福度を診断できます。

(株式会社はぴテック)

さまざまな観点から自分がどのように幸福を捉えているかが可視化でき、非常に参考になります。

実際に試しましたが、現在を把握し、数ヶ月後に再度診断したときにどのように数値が変化するかを見ていくのに最適だと思いました。

このような幸福度を測るツールを活用しながら、従業員と幸福度について対話をしていくことから始めるのもいいのではないかと思います。

まとめ

会社にとって大事な財産の1つは従業員です。従業員がいなければ事業も前に進みません。

縁あって一緒に働く仲間でもありますので、できるだけ従業員には幸福度を高く日々の仕事をしてもらいたいですね。

社長が従業員の幸福を決められるわけではないのですが、仕事を通して少しでも幸福度を高めるお手伝いはできるのだと思います。

35歳のときに40年以上続く会社を後継者として 事業承継を行い、6年間代表として経営に携わりました。代表を退任後は、自身の経験をもとに東京都を中心に中小企業の事業承継を支援しています。中小企業診断士/M&A支援機関登録/やまなし産業支援機構派遣登録専門家