事業承継・M&Aを考え始めたら、まずは取り組みたい事業の「磨き上げ」

こんにちは、3Cサポートの平山です。

事業承継(親族への承継・従業員への承継)やM&Aのことを考え始めている経営者も多いと思います。既存事業が順調に右肩上がりであればいいのですが、横ばいまたは下降気味の中小企業は事業承継やM&Aに時間がかかるかもしれません。

ここでは、事業承継やM&Aを考え始めたらすぐにでも取り組み始めたい事業の「磨き上げ」について触れていきます。

目次

事業承継・M&A前に確認したい現在地

まずは、事業承継・M&Aを行う前に自社の状況をしっかり把握することが大事になります。このとき、「客観的に第三者が見てどう思うか」という視点も入れていくと効果的です。

中小企業の7割は赤字

日本の全企業の中で中小企業の割合は99.7%を占めます。そして、中小企業の7割は赤字であると言われています。

自社の状況はどうでしょうか?

決算上は黒字でも、本業を示す営業利益が赤字の企業も多くみかけます。このコロナ禍による国からの補助金や助成金により最終的な利益が黒字になったという企業も多いです。

営業利益が黒字なのか、赤字なのかを確認していきたいです。もしここ数年の営業利益が赤字で推移しているとしたら早急に改善策を検討したいです。

資金繰りも厳しい

中小企業経営で多くの経営者の悩みの種は資金繰りです。資金繰りが厳しい企業は多く、経営者はよくこの状況に耐えているなと思うことがあります。

私が中小企業を経営したときも資金繰りが厳しいときが多かったです。このとき、顧問税理士に言われたことでハッとしたことがあります。

黒字にならないと資金繰りは改善しませんよね

不思議なもので、どれだけ厳しい状況にいても、だんだんとそこに慣れてしまいます。まずは、本業でしっかり利益が出る状態にすることが先決なのだと気がついた瞬間でした。

会社の資金繰りはどうですか?

下降線は要注意

この5〜10年間の売上高の推移を確認したときに、どのような傾向になっているか確認したいです。

下降線を辿っている場合は要注意です。このトレンドを上向きにするには事業の見直しなど相当な取り組みが必要になるケースが多いです。

事業にはライフサイクルがあります。成長期から成熟期を迎え成長が止まると、そこから下降していきます。この勢いを止めるためには、同じことの繰り返しでは厳しいです。

事業承継・M&A前に必要な事業の「磨き上げ」

「磨き上げ」とは「経営改善」です。

自社の現在地を把握し、この状態をどう改善していくかを考えていきます。

事業の強みはどこか

事業には必ず「強み」があります。

お客様に自社の商品やサービスが選ばれている理由です。案外、この強みをしっかり認識できていない経営者が多いです。

この強みを把握し、ここをどう伸ばしていくかを考えていくことになります。

収益性はあるか

既存事業の収益性を客観的に評価していきます。

そして、必要最低限のコストでどの程度の売上・利益が出せるかを検討していきます。

将来性はあるか

既存事業に将来性があるかを見ていきます。

経営者としては想いが詰まった事業なので将来性があると感じるかもしれません。しかし、客観的に第三者が見て将来性を感じるかどうかも大切になります。

将来性を持てる事業にするためにどのような取り組みが必要なのか。時代の流れに合っているかどうかも考えたいポイントのひとつになります。

事業承継・M&A前に「磨き上げ」が必要なワケ

事業承継やM&Aは、今自分が経営している事業を誰かに引き継いでいくことです。

自分にとって魅力的な事業であっても、他の人から見たら魅力的に感じないことがあります。

後継者から見た視点

親族または従業員で後継者候補がいる場合、その人がこの事業を引き継ぎたいと思えるかどうかが重要になります。

現経営者とは年代もバックグラウンドも違います。

この後継者候補から既存事業を見た時に、覚悟を持って引き継いでいける事業になっているのかどうか。

赤字の事業、資金繰りの厳しい事業、将来性がない事業では誰も引き継ぎたいと思えません。

▼参考
社員の後継者候補が事業承継をためらってしまうワケ|従業員承継で社長が押さえておきたい後継者視点

M&Aの買い手から見た視点

M&Aでも同じことが言えます。買い手側としてもこの事業の何かに魅力を感じないと、M&Aは成立しません。

M&Aで買収したいと考える要因は買い手により異なります。買収先の技術、ノウハウ、人材、商品力、営業力、顧客リスト、土地など、どこに魅力を感じるかわかりません。

そういう意味でも、自社の強みがどこにあるかをしっかり整理し、提示できるようにしておくと、買い手を探す際に活きてきます。

事業承継・M&A前の「磨き上げ」をどう進めるか

事業承継やM&Aに取り組む前に、できるだけ早く事業の「磨き上げ」に着手したいところです。

外部からのサポート

「磨き上げ」(経営改善)といっても、自社のみでは難しいということもあるかと思います。

その際は、外部のサポートを得ることをおすすめします。客観的に事業を見て課題等を整理してもらえるため、気づきを得られることも多いです。

公的機関での経営支援もあります。

一例をご紹介します。

よろず支援拠点
無料で経営相談が受けられます。

中小企業119
専門家派遣をしています。

補助金の活用

国からの補助金を活用することも有効です。

補助金の申請では事業計画書が必要になるため、今後の事業展開を検討するいい機会にもなります。

事業規模、取り組む内容、申請要件など、補助金によっても違いがあります。

▼参考
事業の引継ぎを考え始めたら活用していきたい補助金|引継ぎ前・引継ぎ準備が整ったとき

後継者を巻き込む

親族内承継や従業員承継を考えていて後継者候補がいる場合は、事業の「磨き上げ」の取り組みにその後継者候補を参加させることをおすすめします。

現状を知り、経営改善の計画を立て、一緒になって取り組んでいくことで、後継者候補への承継に対する意識づけもできますし、本人の成長にもつながります。

現状が厳しいほど「磨き上げ」のプロセスは困難になります。この段階で後継者候補の引き継ぐ意思が弱くなったとしたら、後継者として適任ではないと判断してもいいかもしれません。

いずれにせよ、事業を引き継いだあと、最終的な責任は後継者が負うことになります。良い面だけではなく悪い面も見せ、その上で覚悟を持って引き継いでもらうことが会社のためには良いことだと思います。

まとめ

事業承継やM&Aを考え始めたら、まずは既存事業の「磨き上げ」に着手することをおすすめします。

収益性を上げ将来性のある事業にしていくことに加え、会社にある「負の遺産」の整理も必要になります。

必要に応じて、外部のサポートも得ながら進めていって欲しいと思います。今ある事業をより魅力的にして、次の人へバトンタッチする。それが現経営者の役割ではないでしょうか。

事業承継・M&Aのご相談

35歳のときに40年以上続く会社を後継者として 事業承継を行い、6年間代表として経営に携わりました。代表を退任後は、自身の経験をもとに東京都を中心に中小企業の事業承継を支援しています。中小企業診断士/M&A支援機関登録/やまなし産業支援機構派遣登録専門家